あがり症の原因は親からの遺伝なのか?

ヴィゴラ~ス!緊張・あがり症克服の専門家 金光サリィです。

先日、トレーニング中に、クライアントさんから「あがり症の原因は、親からの遺伝的なものなのでしょうか?」と質問をいただきました。

自分のあがり症が他の人と比べてひどいと、遺伝とか何か特別な原因があるのでないかと疑いたくなりますよね。

あがり症と遺伝

あがり症の原因は親からの遺伝?

似たような例として、「がんになるのは遺伝なのか?」という話がありますが、これに対して、「生まれつきの遺伝的要素より、どのような食生活を送ってきたかに依存される」と言う説があります。

まるで遺伝のように見えても、同じ家庭では同じような食生活(嗜好)である傾向が強いため、結果的に同じ病を患いやすいというロジックですね。

あがり症もこの話と同じように、親からの遺伝的要素より、どのような経験をしたかに依存されます。「あがり症になった原因とメカニズム」で詳しくお伝えしているとおり、生まれつきあがり症の人はいません。

大勢の前で失敗した、友達が人前ではげしく叱責されたなど、人前に対するイメージを悪くしたネガティブな経験が必ずあります。この結果、「人前=危険、怖い」と、トラウマとして海馬に記憶されてしまうと、あがり症になってしまいます。つまり、あがり症は遺伝的というより後天的なものです。

しかし、遺伝的要因で、もともとあがり症になりやすい体質であることや、親からの養育体験などの環境要因が原因で、あがり症になりやすい体質になってしまうことはあります

遺伝的にあがり症になりやすい人

同じネガティブな事があっても、「Aさんは楽天的ですぐに立ち直る」「Bさんは深刻に捉えてトラウマとして抱えてしまう」ということがありますよね? つまりストレスや緊張に対して、強い人、弱い人がいるわけです。

ストレスに対する脆弱性の原因の一つとして、セロトニン・トランスポーター遺伝子が関係していると言われています。セロトニンとは、神経細胞から放出される神経伝達物質の一つで、これが適量あると人は安心感を覚えます。

放出されて余ったセロトニンは回収・再利用されます。この回収作業などを担うのが「セロトニン・トランスポーター遺伝子」で、SS型、SL型、LL型の3種類があります。

種類によって回収などに差があり、LL型の遺伝子を持つ人は楽天的、逆にSS型は不安を感じやすいと言われています。ちなみに、日本人の65%以上がSS型遺伝子を持っているそうです。

ネガティブな経験がトラウマとして海馬に記憶されてしまうとあがり症になってしまいます。SS型の遺伝子を持つ人ほど、そのように記憶されることが多くなるでしょう。

参考:日本人は生まれつき悲観的?中野信子氏が解説する“不安”の脳科学

親から受けた幼少期の体験も影響する

環境要因によって、あがり症になりやすくなることがあります。特に脳が発達しつつある幼少期に親から受ける養育体験は強く影響されます。

親から虐待などによる心的外傷を受けた子供は、そうでない子供と比較して、ストレスに対する脆弱性がみうけられます。また、どういった言葉を受け取ってきたかも大変大きいです。

たとえば、もし親があがり症で、人前で話すときに、「あ~緊張する」「震えたらどうしよう」といったマイナスな言葉を頻繁に使う家庭で育った場合、その子供はあがり症になりやすくなるでしょう。

親がそのような言葉を発していなくても、違う場面でマイナスな情報を受け取っていれば、あがり症になるリスクは高まります。

ある幼稚園のお遊戯会で、本来、天真爛漫な子供たちがカッチカチに固まって入場してきたのを見て、変に思った親御さんが、「今日はどうしたの?」と子供に聞くと、「先生が、人前に出るときにはカチンコチンに固まるんだと教えてくれた」と言ったそうです。

このぐらい言葉の影響力は強いのです。しかし、環境要因は、親が対応を変えることや、肯定的な体験を積むことなどで、改善することができます。これは遺伝的要因とは大きく異なることです

まとめ
  • 生まれつきあがり症の人間はいない。あがり症は遺伝的ではなく後天的なものである
  • しかし、遺伝的にあがり症になりにくいタイプ、なりやすいタイプがいる
  • また、親からうける養育体験などが原因で、あがり症になりやすい体質になる場合もある

最後に重要なことを補足しておきます。受け取る言葉だけでなく自分が発する言葉にも脳は反応します。ひどいあがり症であった私が治すために初めに取り組んだことが、マイナスな言葉を断つことです。

これは、私のあがり症メンタルトレーニングでのルールとして一番に伝えています。あがり症で悩まれている方は、しばらくは大変かもしれませんが実践してみてください。物事の捉えかたや性格が確実に変わってきますよ。

あがり症のための脳科学にもとづいたメンタルトレーニングの礎を築いたパイオニア。自身が極度のあがり症に苦しんでいた時期がある。ひどいあがり症の人ほど、スピーチ練習や場数、呼吸法などではなく、メンタルトレーニングが必要と伝えている。
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