あがり症とは?あがり症になった原因とメカニズム
ヴィゴラ~ス!緊張・あがり症克服の専門家 金光サリィです。
アサヒグループホールディングス「ハピ研」の「緊張しやすいタイプか?」という設問では、「とても緊張しやすい」が41.2%、「どちらかいうと緊張しやすい」が41.6%と回答されています
。割合的に多くの日本人が緊張しやすい状況といえます。
この緊張の程度がひどい場合、言い換えて「あがり症」ということがあります。今回のトピックでは、「あがり症とは?あがり症になった原因とメカニズム」についてお話します。とくにあがり症になった原因やメカニズムを知ることは、間違った克服方法をさけるために大事な基礎知識となります。
知らないものを怖いと思うのは人間の本能です。あがり症が何なのか知ることで、安心してあがり症対策に取り組めるようになります。
あがり症とは?
あがり症とは、人前でスピーチ・プレゼンする時、発表・挨拶する時、面接やスポーツ、ピアノ演奏する時などに、次のような症状を引き起こしてしまうことを言います。その場面や症状の程度は人によって様々です。電話をかける時にあがる人もいます。
- 胸や心臓がドキドキする
- 声が震える、出ない、吃音どもる
- 体、手足や首元が震える
- 顔が赤面、赤くなる、ひきつる
- 涙、泣く、嗚咽、手汗や脇汗などが出る
- 頭痛、頭が真っ白になる
- 息ができない、続かない、呼吸困難
- 動悸、えずく、苦しく吐き気がする
- 胃痛、腹痛、下痢になる
- 涙がでる、めまい、視界がゆがむ など
また、あがり症の症状を病院で伝えると、発達障害、パニック障害、社交不安障害(社会不安障害)、対人恐怖症、うつ病などと診断されることがあります。しかし、恐怖や不安といった感情は誰もが持っていて、自分が「病気」だと思うと、それに囚われて克服への道が遠のくことがあるので好ましくありません。
あがり症と緊張の意味の違い
「あがり症」と「緊張」の意味に違いはあるの?とたまに聞かれます。これらに厳密な定義はありません。普段は、あがり症の状態をさして、緊張すると言う人の方が多いです。たとえば、「心臓がドキドキする」ことを「緊張する」と言います。
「あがり症の人」と「緊張しいの人」は、同じような意味で使われることがありますが、程度としては、「あがり症の人」の方が「緊張しいの人」より深刻なイメージを持っています。ただ、皆がみな自由に使っているので、実際の程度は人それぞれです。
いずれにしろどんな表現であっても、人前でのスピーチ・プレゼンなどで手足や声が震えるなどといった症状が、本人にとって普段のパフォーマンスが発揮できないほど酷い状態なら問題です。
多くの人が間違っているゴール設定
あがり症の克服方法に関する情報は、私がサポートをはじめた2010年と比べると、玉石混交ながらも格段に増えました。しかし、なぜか未だに深く言及されていないことがあります。それは「あがり症ではない状態ってどんな状態か?」ということです。
あがり症ではない状態(ゴール)が不明瞭のまま、あがり症を克服することを目指しているのは、おかしな話だと思いませんか?
「そんなの決まっているよ!リラックスして落ち着いて、上手に話せる人はあがり症ではないよ」という声が聞こえてきそうです。
確かにこの状態であれば、この人はあがり症ではありません。でも逆に、「落ち着きなく話が上手でない人」は、あがり症の人と“必ず”言えるでしょうか?
あがり症の人もいるし、あがり症でない人もいるので、答えはNo.です。会ったことがないと実感がわかないかもしれませんが、全然落ち着いてないし、全然話しが上手ではないけれど、あがり症ではない人はいます。
カラオケでいうと、歌は上手ではないけれど、人前で歌うのが大好きでマイクを離さない人といった感じでしょうか。
つまり、あがり症であるかそうでないかは、リラックスして落ち着いているとか、話すのが上手とかではなく、本人が人前で話すことを好きだとか、楽しいとか、ポジティブに感じているか否か、技術というより感情の問題ということです。
人前で落ち着いて上手に話せることを目指すのか、人前で話すのが好きになることを目指すのか、この微妙なゴール設定の違いで、結果が大きく変わってきます。これは多くのあがり症克服のためのセミナーなども誤解している点なので、くれぐれもお気をつけください。
あがり症になった原因とメカニズム
あがり症になった原因が必ずある
あがり症の人は、人前で「大きな失敗をした」「恥をかいた」など、何かしらトラウマになったネガティブな出来事、経験があります。
よくある例としては、「学校でみんなの前で教科書を音読するときに間違えた」「歌やリコーダーの発表会で失敗して笑われた」「プレゼンや会議などで質問にうまく答えられなかった」などですね。
それが強烈であったり、何度も繰り返したりすることで、海馬(脳の記憶を司る部位)に「人前=危険」と記憶され、あがり症になってしまいます。自分の体験だけでなく、他人がみんなの前で激しく叱責され、それを見たことで人前が苦手になってしまうようなこともあります。
まれに管理職や、部下や後輩の指導係になってから、急にあがり症がひどくなったという方もいます。これはリーダーとして、人よりもしっかりしなければならないとか、他人の評価が今までより厳しくなったとか、過度に周りの目を気にしてプレッシャーを感じていることが一つの理由です。
また、あがり症なのは、あなたのプライドが高いとか自意識過剰だと言われることがあります。たしかにそれがマイナスに働くことはありますが、そこは本質的な原因ではありません。
過去のネガティブな経験によって脳(海馬)が「人前=危険」な場所として認識してしまったことがあがり症になった根本的な原因です。つまり、あがり症を克服するには、成功体験などによって「人前≠危険」であると海馬の記憶を更新することが必ず必要になります。
具体的な克服方法はこちらをお読みください。
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原始的なあがり症(緊張)のメカニズム
原理を深く知ったところで克服できる訳ではありませんので、あがり症(緊張)のメカニズムは、小難しくならないようにできる限り簡略化して説明します。
脳(海馬)に「人前=危険」と認識された状態で、人前に立つと、脳の扁桃体(偏桃体)という部位が「不快」と反応し、視床下部を通して自律神経系うち交感神経が刺激され優位になります。あわせて脈拍や血圧等を上げるアドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどのホルモンが分泌されます。
「交感神経と副交感神経が優位な時の状態」は次の表のとおりです。緊張しているときと、リラックスしている時の違いは、交感神経が優位になっているか、副交感神経が優位になっているかの違いともいえます。
端的に言うと、脳に「人前=危険」と認識されたまま、実際に人前に立つと、交感神経が刺激され緊張してしまうということです。
交感神経と副交感神経による作用の特徴と比較
(東邦大学薬学部薬物学教室HPより抜粋)
交感神経 | 副交感神経 | |
---|---|---|
体と精神 | 緊張 | リラックス |
呼吸 | 激しくなる | 落ち着く |
血圧 | 上昇 | 下降 |
心拍数 | 上昇 | 下降 |
発汗 | 促進 | 抑制 |
交感神経が刺激され優位になる反応は、”闘争・逃走反応”とも呼ばれています。狩猟時代に急な外敵と遭遇したときに瞬発的にエネルギーを高める必要があったことのなごりと言われています。
恐怖の対象が身体的なものであれ、現代における心理的なものであれ、同じように防衛機能が働いてしまうことが特徴です。
- あがり症とは、人前で話すときに、手足や声が震えるなどといった状態をさす
- ネガティブな経験により脳(海馬)が「人前=危険」と認識したことがあがり症になった原因
- 脳がその認識のまま人前に立つと、交感神経が刺激され緊張してしまうのが、あがり症のメカニズム
- あがり症を克服するには、「人前≠危険」であると脳(海馬)の記憶を更新する必要がある
次のトピックは、「あがり症がなかなか治らない人の3つの誤解」です。なかなかあがり症が治らない人は、悪化することがあるので必読です。
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