あがり症の原因は親からの遺伝?科学的な真実
ヴィゴラ~ス! 脳科学をベースにした緊張・あがり症克服の専門家 金光サリィです。
先日、あがり症克服メンタルトレーニング中にクライアントさんから「親もあがり症です。あがり症は遺伝なのでしょうか?」と質問をいただきました。
実は私も、以前は人前でたった1分のアナウンスもできないほどの極度のあがり症で、親も緊張しいな性格だったので、「もしかしてこれって遺伝?」と疑ったこともあります。
でも、あがり症は決して先天的なものではありません。今日は、あがり症と遺伝の関係について、詳しくお話ししていきます。
あがり症の原因は後天的なもの
生まれつきあがり症の人はいません。
あがり症になった人には、顕在的に覚えているか否かは別として、人前で失敗して恥をかいたり、友達が人前で叱責されるのを見て恐怖を感じたりするなど、人前に対するイメージを悪くしたネガティブな経験が必ずあります。
この結果、「人前は危険だ、怖い」と脳に記憶されてしまうと、あがり症になってしまうのです。
ですから、親があがり症だからといって、子供が必ずそうなるわけではありません。
あがり症になりやすい遺伝的な傾向はある
ただし、遺伝的にあがり症になりやすいタイプと、なりにくいタイプがいることは事実です。
例えば、一見ネガティブな出来事があっても、すぐに立ち直る人もいれば、深刻に受け止めてトラウマとして抱えてしまう人もいますよね。これには、脳内の「セロトニン」という神経伝達物質が関係しています。
セロトニンは安心感を生む物質ですが、放出された後の回収・再利用を担う「セロトニン・トランスポーター遺伝子」には、SS型、SL型、LL型の3種類があります。
LL型の遺伝子を持つ人は回収・再利用が上手くいくため安心感を得やすく楽天的になりやすい一方、SS型を持つ人は不安を感じやすいと言われています。
欧米人と比べて、日本人はSS型を持つ人が多いそうです。
参考:日本人は生まれつき悲観的?中野信子氏が解説する“不安”の脳科学
つまり、SS型の遺伝子を持つ人ほど、ネガティブな経験がトラウマとして記憶されやすく、あがり症になりやすい傾向があるということです。
養育環境もあがり症に影響を与える
また、特に脳が発達する幼少期の養育体験も、あがり症になりやすさに影響を与えます。
親から虐待などによる心的外傷を受けた子供は、そうでない子供と比較して、ストレスに弱い特徴がみうけられます。
どういった言葉を受け取ってきたかも大きいです。
例えば、親があがり症で「あ~緊張する」「震えたらどうしよう」といったマイナスな言葉を頻繁に使う家庭で育つと、子供もあがり症になりやすくなります。
言葉の影響力は想像以上に強く、ある幼稚園の先生が発表会前に「人前に出るときには緊張してカチンコチンに固まってしまうんだよ」と教えたことで、昨日まで天真爛漫だった子供たちが、カチカチに固まって入場してきたという話を聞いたことがあります。
しかし、遺伝的な傾向があっても、養育環境の影響を受けていても、決して諦める必要はありません。
あがり症は後天的なものである以上、あがり症の根本的な原因である人前に対する恐怖心を改善することで、必ず克服できるのです。
- あがり症は先天的なものではなく、必ず後天的な原因がある
- 遺伝的にあがり症になりやすい傾向は存在する
- 養育環境もあがり症のなりやすさに影響を与える
- 後天的なものである以上、適切な方法で必ず改善できる
受け取る言葉だけでなく、自分が発する言葉にも脳は反応します。
病的にひどいあがり症だった私が最初に取り組んだのが、マイナスな言葉を使わないことでした。今ではこれを、私のあがり症克服トレーニングの第一のルールとしています。
あがり症でお悩みの方は、まずはこれを実践してみてください。言葉を変えることで、物事の捉え方や性格が確実に変わっていきますよ。
さらに詳しい克服方法を知りたい方は、人前で話すのがラクになる!5つの魔法(ダイヤモンド社)をお読みください。