あがり症の克服方法の分類と迷わない選び方
ヴィゴラ~ス!緊張・あがり症克服の専門家 金光サリィです。
ネットを検索すればあがり症を克服するための方法が数えきれいほど表示されます。正直、私も含めどれもよいことは書いてあるし、選ぶのに悩んでしまいますよね。
「色々な方法を試したのですが、どれも効果がありませんでした」とおっしゃるAさんが、先日トレーニングを受けに来られました。あがり症のための話し方教室やセミナーなどに通っただけでなく、ネットで販売されている教材も購入されたようです。
私は、英語の勉強方法とあがり症の克服方法には、たくさんの共通点があると思っています。その一つが○○法といったものが山のように存在しているのに、英語を話すこと、人前で話すことが苦手な日本人が多いことです。
これは根本的に間違った方法が世にたくさん出回っていることの証です。英語の場合は、音から学ばないといけないのに文法中心のものが溢れています。あがり症の場合は、原因を解消しなければいけないのに緊張を抑えるようとする対処方法が世に溢れています。
今回のトピックが、TVに出演してるから、本を出してるから(私も出版してますが(笑))、ネットで上位表示されているから、といった表面的な選び方から変わるきっかけになればと願っています。
先にこれらのトピックを読んで頂けると理解がよりスムーズになります。
あがり症の克服方法の分類
Aさんから具体的に今まで試したあがり症克服方法を聞いてみると、非常にたくさんありました。整理すると次のように分類されます。
分類 | 克服方法 |
---|---|
呼吸法・発声練習系 | ・深呼吸 ・腹式呼吸 ・丹田呼吸 ・発声、活舌練習 |
運動・食事系 | ・身体を緩めるストレッチ、ヨガ ・自律神経に働きかけるツボ押し ・セロトニンを増やす食べ物 |
スピーチ練習系 | ・話の組み立て方(起承転結等)を学ぶ ・話し方教室等での予行演習(場数を増やす、場慣れする) ・自分が話しているのを撮影して観る |
心理(精神)療法系 | ・催眠療法(退行催眠) ・認知行動療法(森田療法) |
薬系 | ・漢方薬、市販薬、サプリメント ・心療内科(抗不安薬等) |
あがり症を克服できなかった理由
なぜAさんが各々の方法で克服できなかったのかを説明していきます。Aさんは、人前に立つと声や手足が震える極度のあがり症です。これを大前提としてお読みください。
呼吸法・発声練習系
あがり症を克服しようと思って、「緊張 リラックス」とネット検索すると必ずヒットするのが「呼吸法」です。深呼吸、腹式呼吸、丹田呼吸などが多く紹介されています。人前で堂々と話しているアナウンサーさんや声優さんがよくこの手の発声練習をしているので正しい方法のように感じるかもしれません。
たしかに深呼吸、腹式呼吸などにより副交感神経が優位になる(リラックスする)というメカニズムは存在します。たとえば自宅など何も脅威がない環境で、これを行えばそのとおりリラックスできるでしょう。
しかし、極度のあがり症の人は、本番中はもちろんのこと、本番待機中もすでに緊張して交感神経が優位なので、その状態で深呼吸、腹式呼吸などをしたところで、副交感神経が優位に切り替わることはありません。
何を隠そう極度のあがり症であった私は音大出身で、呼吸法(腹式呼吸)を完璧にマスターしていましたが、呼吸法で緊張を抑えることはできませんでした。呼吸法のスペシャリストであるオペラ歌手の方があがり症に悩んで私のトレーニングを受けに来られたこともあります。
本番前に息を○秒吸って○秒吐く。本当にこれでリラックスできるなら、全てのあがり症の人が救われるのですけどね。効果があるのは軽い症状の方のみでしょう。
運動・食べ物系
緊張をほぐすストレッチやヨガ、副交感神経を優位にするツボ押し、交感神経と副交感神経のバランスを整えるセロトニンの分泌に必要な食べ物を摂取するなど、これらはすべて根本的なあがり症の原因を解消するものではありません。
※あがり症を克服するには、あがり症の原因を解消すること。つまり「人前=危険」という脳(海馬)の認識を「人前≠危険」という認識に変える必要があります。詳しくは「あがり症になった原因とメカニズム」をご覧ください。
これらを実行することによって、日頃はリラックスした日々を送られるでしょう。誰にでもできるものなので、飛びつきたい気持ちは分かります。しかし、あがり症の根本的な原因が解消されない以上、本番ではいつもどおり交感神経が刺激されて緊張するといった流れになってしまいます。
スピーチ練習系
呼吸法・発声練習と一緒に、話し方教室やセミナーなどでよく取り組まれている内容が、話の組み立て方を学んだり原稿を作ったり、生徒のみんなの前でスピーチ練習することです。自分が話しているのを撮影して見直すところもあるそうです。
決して、話の組み立て方を学んだり原稿を作ったりすることが駄目だとは言いませんが、いくら完璧な状態にしても、あがり症の原因は解消されません。こちらは「あがり症克服にセミナーに通ってスピーチ練習が不要な理由」をお読みください。
心理(精神)療法系
催眠療法(退行催眠)
催眠療法(退行催眠)は、あがり症になったきっかけまで遡ってトラウマを解消するという方法です。今回紹介している克服方法のなかで唯一、あがり症の原因を解消することに視点を向けており、考え方としては正しいです。
しかし、2つ問題点があります。1つはトラウマを思い出すことは、過去を再現することと同じようなものなので、きちんと解消できないと「人前=危険」の強化につながり、あがり症がよりひどくなります。
もう1つが、ほとんどの重度のあがり症の人が持つトラウマは、1回限りではないことです。あがり症になってしまったために、何度も何度も人前で恥をかいてしまっているのが普通です。それらすべてにアクセスして解消していくのは現実的ではないと考えます。
認知行動療法(森田療法)
認知行動療法(森田療法)は、自分のあるがままを受け入れることを基本的な考えにしています。そのうえで物事の捉え方をポジティブなものに変えていくという方法です。
人前でうまく話せないあがり症の自分を受け入れ、それをポジティブに捉える。問題を問題と思わない。このブレーキとアクセルを同時に踏むような克服方法は、一般人にはかなりハードルが高いでしょう。
薬系
抗不安薬などを服用すると、頭がぼーっとして、恐怖や不安を感じにくくなります。個人的に薬は、一番避けていただきたい方法です。なぜなら依存性が高く、あがり症の症状を強制的に抑えるもので、飲み続けたからといってあがり症を克服できるわけではないからです。身体にも良くありません。
正しい克服方法と講師の見分け方
最近、カイロプラティック、整体、鍼灸(針)、筋トレ、パワーストーン等のグッズなどであがり症が克服できるみたいな話を耳にしましたが、これらについてはもう語りません。本トピックをここまで読んで頂けた方はもうお分かりですよね?
極度のあがり症でも正しい克服方法を選べば克服できます。ただし、その講師が本物であるかも同レベルで重要です。
「あるセミナーに参加したら、講師がガクガク震えていて、こりゃだめだと思った」「場数・場慣れでは治らないとうたっているのに、場数・場慣れが必要だからお金を払ってスピーチ練習に通えと言われた」、といった冗談みたいな話をお客さんから聞いたことがあります。
インターネットの普及とともに情報の入手が容易になり、他人のコンテンツを流用して、だれでもHPやブログ等でもっともらしいことを発信できる時代になりました。お金を払って本を出版したり、TVに出演している人もいます。
もはや表面上の情報はいくら確認しても無駄なので、シンプルに次の3点のみを確認しましょう。
克服方法が原因を解消するものか?
HPやブログなどで、克服方法があがり症の原因を解消するものなのかを確認します。ただ断面的な情報だけで判断するのは難しいと思います。トレーナーが本を出版している場合は、それを必ず読んで体系的に納得できるものを選びましょう。間違ったサービスを受けた場合の金額を考えれば、本代はわずかなものです。
もともと極度のあがり症であったか?
少し緊張しいだったとか、もともと話すのが得意な人では、あがり症の複雑な心境を理解するのは難しいです。場数だ、場慣れだと、根性論を言う確率も高いです。講師(トレーナー)のプロフィールを見て、もともとあがり症であったかを確認しましょう。※とはいっても、ここはいくらでも創作できます。少なくとも、とってつけたようなプロフィールの講師は避けましょう。
しっかりとあがり症を克服しているか?
先にお伝えした通りように、講師があがり症を克服できていない場合があります。これは伝えている克服方法が間違っているか、自分のものにしていない証拠です。数十人ではなく数百人以上のごまかしがきかない規模での講演実績(写真など)があるかが目安になります。
- 世にあるあがり症克服方法は緊張を抑えるようとする対処方法がほとんど
- これらの方法は症状の軽い人はともかく極度のあがり症の人向けではない
- あがり症克服方法を選ぶときは、克服方法が原因を解消するものか?もともと講師が極度のあがり症であったか?そしてしっかり克服しているか?を確認すること
私がお伝えしている克服方法は、あがり症の原因を解消するものです。脳科学にもとづいて海馬の記憶を「人前=楽しい」に更新し、普段どおり自分の言葉でしゃべれるようになります。興味のあるかたはこちらをお読みください。
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