緊張・あがり症を治す薬を飲む前に知って欲しい事
あがり症克服の専門家の金光サリィです。最近、あがり症を治す薬を処方されている、もしくは服用経験のある方がトレーニングを受けにいらっしゃることが増えています。
あがり症の薬の種類と効果
インデラル、デパス、エチラーム、エチゾラム、メイラックス、レキソタン、ワイパックス、レクサプロ、ソラナックス、ウット、イララックなど、市販薬、漢方、サプリを含めて色々なあがり症の薬があります。
残念ながらこれらの薬は、ドキドキや手の震えなどの緊張、あがり症の症状を一時的に抑えてくれるかもしれませんが、あがり症を根本的には治してはくれません。薬によっては、全く症状を抑える効果がなかったという人も多いです。
一般的な薬とあがり症の薬の違い
頭が痛くてたまらないとき、あなたは頭痛薬を飲んで痛みを鎮めることがあると思います。しばらく薬を飲んでいると、いつの間にか治っていた。こうなると、薬が頭痛を治してくれたと錯覚しがちです。
しかし、薬はあくまで痛みを感じないようにしただけです。頭痛を治したのはあなた自身、つまり「自然治癒力」によるものです。
一方、あがり症のインデラル、デパスなどの薬を飲むと、意識がボーとし、結果的に緊張感が薄れます。これは頭痛薬と同じで、薬があがり症を治してくれたのではなく、薬はあくまで緊張やあがりを感じさせないようにしただけです。
加えてあがり症の場合は、頭痛の時と違って「自然治癒力」が発揮されてあがり症が治るということはありません。むしろ薬がないことが不安になっていくことがあります。
「そのうち薬を飲まなくても大丈夫になる・・・」と希望を持って服用する人もいると思いますが、むしろ依存してしまう傾向が高いのです。
薬ではあがり症を克服できない理由
生まれた時からあがり症という人はいません。人前で大きな失敗をした、馬鹿にされたなどのネガティブな経験が何度もあったり、それらが強烈だったりすると、脳には「人前=危険」というイメージが定着してしまいます。
この状態のまま人前に立つと、防衛本能が発動し、心臓がドキドキしたり手や足が震えたりします。
結果、人前でうまく話せなくなります。防衛本能が発動すると言われてもピンと来ない人は、夜道を歩いている時に突然暴漢に襲われるような場面を想像してみてください。
つまり、あがり症を克服するには、薬を飲んであがり症の症状を抑えること(対症療法)ではなく、根本的な原因である人前で話すイメージをポジティブにすること(原因療法)に専念する必要があります。
そうすれば防衛本能が過度に発動し、ドキドキしたり手が震えたりすることはなくなります。
※一般的な話し方教室やセミナーなどで行われている「上手に話すための練習」も、大元の原因に目を向けていないため、あがり症の根本的な解決に至りません。
イメージを変えるには成功体験が必要
人前であがらずに話せたという喜びの感情を伴った成功体験が得られると、人前へのイメージがポジティブに変わります。
しかし、前述のとおり、過去の体験から「人前=危険」と記憶されている人は、人前に出ると反射的に防衛本能が発動するので、成功体験を得られないどころか、場数を踏むほど失敗の経験が積み重なり、人前に対するイメージがどんどん悪化していきます。
この場合は、架空の成功体験を事前に刷り込むことで、人前でのイメージをポジティブにしておく必要があります。詳しくは次の本にまとめています。
薬では感情的な成功体験が得られない
最後に、人によっては、薬を飲んで成功体験を得れば良いのでは??と考える人もいるかもしれません。しかし、残念ながら薬を飲んだ場合は、感情的な成功体験が得られません。
なぜなら、薬を飲んでいるという自覚があると、たとえ人前であがらないで話せたとしても、それは薬のお手柄として捉えてしまいます。
そして、何よりあがり症の薬を飲むと頭がボーとするので(風邪薬をもらう時に眠気をもよおす危険がありますと言われる時があると思いますが、その強いバージョンだと考えてください)、恐いという感情だけでなく、やった!話せた!という喜びの感情も得られないためです。