ドラマ「溺れる人」から考察するあがり症とアルコール依存症
アルコール依存症になってしまった主婦を描く「溺れる人(ドキュメンタリードラマ)」を観ました。
お酒をやめなければ・・・と何度自分に言い聞かせても止められない。その辛さがよく表れていたドラマでした。登場する医者がもっと脳の仕組みを理解してくれたら患者がラクになれるのにと思うシーンが幾つかありました。
人間の脳は信じたとおりに行動する
例えば医者が患者に、「お酒を止めるのは難しい」「この病気に完治はない」と何度も言う場面。これはみなさんよくご存じのプラシーボ効果の逆バージョンになります。
- プラシーボ効果とは・・・
- 偽薬を処方しても、薬だと信じ込む事によって何らかの改善がみられる事を言う。この改善は自覚症状に留まらず、客観的に測定可能な状態の改善として現われる事もある。出典 偽薬 – Wikipedia
患者が「自分は一生アルコール依存症である」と信じ込んでしまうと、たとえ治る見込みがあっても脳は信じたとおりにアルコール依存症のままでいようとします。
私の友達のKさんは、複雑骨折をしたときに、医者から「もう普通に歩くことはできません。車椅子生活になります」と決めつけられたことに腹を立て、「絶対歩けるようになってやる!見とけよ!」とメンチを切ったそうです。そして、数か月で普通に歩けるようになりました。もし、医者の言葉を信じていたら、歩けるようにはならなかったでしょう。
あがり症も同じで、「あがり症は治らない」とか「誰しも人前では緊張するものだ」などと言っている人がいます。でもそれを信じることは危険です。あがり症が治る人はたくさんいますし、緊張なんて微塵も感じない人も山ほどいます。
人間の脳は他人の期待に応えようとする
また、医者が「お酒を止めるのは難しい」「この病気に完治はない」ということを家族に告げる場面がありました。
家族のサポートが大事なのは分かりますが、周りの人が本人を「この人は一生アルコール依存症なんだ」という態度で見てしまう、接することは、脳科学的に見れば本人がアルコール依存症から抜けにくくなる原因となります。
「あなたってやさしい人ですね」という態度で接されると、優しく振る舞ってしまいたくなるように、人間の脳は、基本的に他人から期待される自分でいようとする習性があります。もちろん、人によってその度合は異なります。
あがり症もそういった理由から、自分があがり症だと知っている人たちの前より、そのことを知らない人の前の方があがりにくいことがあります。人前でリラックスするために、自分が緊張していることを正直に告白しようという教えもあるようですが、同じ理由から私はおすすめしません。
人間の脳は意識することをやめにくい
もう一つ、ドラマでは、同じ病気で悩む人たちと集まってアルコール依存症について語る場面がありました。依存症の治療ではありがちですね。驚かれるかもしれませんが、これも脳科学的には、患者の脳に「飲め、飲め」と刺激する行為になりえます。
道路に「重大事故多発!注意!」という看板を立てると、逆に脳が事故をイメージしてしまい事故が多発するという事例を聞いたことがあるかもしれませんが、これも同様の理由です。
問題を抱える人達と何度も集まってお酒に関するキーワードを聞き、お酒について意識するほど、脳は「そんなにお酒のことを考えているなら・・・」と普段の生活でお酒をよく視界に入れ、飲みたくなるように仕向けます。
ですから、あがり症を克服するときも、だらだらとトレーニングを続けてはいけません。人前での慣れが大事だと信じて、スピーチ練習や話し方教室などのような所に足を運ぶことや、毎日のように「あがり症克服」などという言葉をインターネットで検索するような行為自体、「自分は人前で話すのが苦手だ」という意識を何度も自分に植え付ける行為になりかねません。あがり症から卒業する日を決めて短期集中で取り組むことが重要です。
脳の仕組みを利用してあがり症を克服する
とにかく練習だ、場数が必要だ、といった根性論や、単なるテクニック論では、克服が遠のきます。あがり症は、過去の人前での苦い経験から、人前=危険と脳に認識されてしまったことによる一種の防衛本能の結果です。脳の仕組みを理解し利用して、あがり症を克服しましょう。
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あがり症克服トレーニング